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手つかずの映像・展示研究の空白地帯!

「展示映像」
総合アーカイブプロジェクト Comprehensive archive project of exhibition video

1985年つくば科学万博 IBM館 『科学万博をささえるフィルム映像』(社)日本映画機械工業会,1985年,p5

国際博覧会等で上映された映像作品を後世に残し・・・・
調査・収集・保存・再現公開の研究拠点をめざす

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展示映像の危機

「展示映像」とは、博覧会・展示会等のイベントや博物館、企業のショールーム等のために制作・上映された映像のコンテンツやシステムの総称です。

1970年に開催されたわが国初の国際博覧会である日本万国博覧会の日本館では、8面マルチ映像『日本と日本人(原題:富士』が上映されました。会期終了後そのフィルムは長く所在不明でしたが、2013年に九州大学芸術工学研究院教授の脇山真治はイマジカイメージワークスの小野雅史氏の協力を得て、43年ぶりに東京都内でフィルム原版を発見しました。博覧会等のために制作されてきた多くの「展示映像」は組織的に保存されることがなく、破棄もしくは散逸の現状にあります。以下に写真で例示する展示映像は、どれも現時点では再現することができません。貴重な映像遺産は消失の危機に直面しています。

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本プロジェクトの目的

国際博覧会等で制作・上映されるいわゆる「展示映像」は、映画のような世界標準がなく、システムや表現の特殊性ゆえにほとんど残されません。同時代の最高のスタッフや先端技術を使った映像は空間デザイン、制御技術、特殊音響、上映のための演出など多方面の構成要素をもっています。これらの映像の廃棄・散逸を防ぎ、後年の制作参考資料、研究資料としてあるいは映画に比肩する映像遺産として残すために、コンテンツ(フィルム&デジタル、音声)のみならず、撮影・上映技術、特殊効果、空間計画などを総合的にアーカイブすることを目的とします。

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保存されない映像

映画はフィルムセンター等で永年にわたり保存されていますが、展示映像は映像原版、音声原版などの所在は、ほとんどわかっていません。アーカイブの責任所在はあいまいなままなのです。関連機材もすでにほとんどが廃棄されており歴史資料自体が消滅しつつあります。したがって歴史資料としても不十分であり「映像・展示研究の空白地帯」となっています。

1985年 つくば科学万博 IBM館 『科学万博をささえるフィルム映像』 (社)日本映画機械工業会,1985年,p5
1975年 沖縄海洋博 住友館 『沖縄海洋博覧会公式記録』1975年
1970年 日本万国博 サントリー館 『写真集・日本万国博』朝日新聞社, 昭和45年
1970年 日本万博 富士グループ館 『写真集・日本万国博』朝日新聞社, 昭和45年
1970年 日本万博 日本館8面マルチ映像の撮影機 (株)ナックイメージテクノロジー所蔵写真
1970年 日本万博 『日本と日本人』 『日本万国博覧会日本館運営報告書』日本貿易振興会, 昭和45年

映像による展示の原点は1900年パリ万国博覧会に見ることができます。フランスのリュミエール兄弟によって映画が発明されてわずか5年後のことです。会場内で公開された展示映像は保存されておらず、再現することはできません。どんな展示があったのか概説してみましょう。

脇山真治『イメージの時代の予感~1900年パリ万国博覧会~』 出典:「川上音二郎と1900年パリ万国博覧会展図録」福岡市博物館、2000年

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同時代最高のスタッフ

国際博覧会の展示映像は、その時々にもっとも注目されるスタッフで制作されています。たとえば1970年日本万国博覧会の日本館で上映された8面マルチ映像作品『日本と日本人』では、監督/市川崑、音楽/山本直純、脚本/谷川俊太郎の各氏が担当しています。同様に富士グループパビリオンの音響監修と作曲は黛敏郎、電力館の製作は泉真也、サントリー館の演出監修は勅使河原宏、せんい館には気鋭の映像作家である松本俊夫といった具合です。

1985年つくば科学万博では、テーマ館には映像プロデューサー/粟津潔、監督/大林宣彦、原画/長岡秀星、音楽/富田勲。松下館は監督/恩地日出夫、音楽/武満徹などで、その他多くの名だたるクリエーターが関わっています。これら最高のスタッフを擁して制作された作品は、後年の研究に資することもなく博覧会の会期終了と同時に多くが保存されないままに散逸してしまいます。関わったスタッフもほとんど知られていません。

写真上下:1970年日本万国博覧会のパビリオン 朝日新聞社編『写真集・日本万国博』朝日新聞社、昭和45年
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表現と技術と空間が 総合する貴重な映像遺産

展示映像は空間デザイン、造形、スクリーンデザイン、撮影・上映システム、音響効果、特殊照明、ライブ構成等が組み合わされた、総合演出が特徴です。

事例をもっと見る

1970年 日本万博 日本館 『日本万国博覧会日本館運営報告書』 日本貿易振興会, 昭和45年
1970年 日本万博 日本館の撮影機材 (株)ナックイメージテクノロジー所蔵写真
1985年 つくば科学万博 みどり館 脇山真治撮影
1982年 世界まつり博 テーマ館映像ドーム 脇山真治撮影

事例をもっと見る

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展示映像のアーカイブは徐々に進めています

アーカイブの基本的な考え方
  1. 過去の作品のオリジナル(フィルムやデータともに)の所在を明らかにして、その複製を保存する。
  2. 展示映像の上映状況のわかる記録映像、写真、合成映像等を保存する。
  3. 福岡で複製=2次データを保存することにより、将来にわたりオリジナルに対するリスク(災害時等)の分散と万一の救済補償の役割をはたす。
  4. 展示映像は特定の空間で上映され、スクリーンデザインや音響システムも独自であることが多い。したがって映像コンテンツの保存だけでは意味をなさないため、できる限りその関連資料も保存対象とする。
  5. 「擬似的な再現」ができるようにデータを活用すること。
  6. 公開と公的活用ができるように著作権等の権利関係を明らかにする。
  7. 新たに制作される展示映像の記録・保存の指針を策定する。

わきすた&九州大学では、下記の作品をアーカイブしています。

  1. 『日本と日本人』日本万国博覧会(1970)日本館上映8面マルチ映像作品。2013年6月東京都内にてフィルム原版を発見。いまだ音声原版は見つからず。8面合成版。 記者発表『日本と日本人』のフィルム原版発見
  2. 『鉄と稲』つくば科学万博(1985)歴史館上映作品。スライド原版ならびに上映プリントの大半、大型映像JAPAXの縮小版35mm、上映記録映像、上映会場記録写真等。
  3. 『マリンフラワーズ』沖縄海洋博覧会(1975)3面マルチ映像
  4. 『未来への挑戦~渋沢栄一物語~』さいたま博覧会(1988)渋沢栄一館3面マルチ映像
  5. 『新しい北海道』北海道開拓記念館(1992)6面マルチ映像
  6. 『時の回廊への誘い』山口きらら博覧会(2001)山口館3面マルチ映像
  7. 『左門と一緒に』千歳サケのふるさと館3面マルチ映像
  8. 『JL002東京~サンフランシスコ』科学技術館(1970年代) 9面サークルビジョン (音声は未発見)
  9. 『日本・人と自然』スポーケン国際博(1974年)日本政府館 3面マルチ映像
合成版作品保存リスト(DVD等)
『波頭をこえて』3面マルチ映像、海上自衛隊佐世保史料館/『TOKIを探せ~新潟ふれあいのたび~』8面マルチ映像、新潟ふるさと村/『さいふまいり』3面マルチ映像、大宰府天満宮展示館/『近畿の森』5面マルチ映像、大阪花の万博いちょう館/『Canadian Rockies~Dream Festival~』3面マルチ映像、松下電器産業創立70年記念/『流~STREAM~』3面マルチ映像、ルイジアナ国際河川博覧会(1882)日本館/その他
スプリットスクリーン作品保存リスト(DVD等)
『Multiple Man』カナダ国立映画庁(1969)/『View From The People Wall』New York World’s Fair1965/『In the Labyrinth』カナダ国立映画庁(1967)/『House of Science』C&R.Eames(1962)/『Goods』C&R.Eames(1981)/その他
フィルム保存状況の調査
1970年 日本万博 電力館 『写真集・日本万国博』朝日新聞社、
昭和45年
1975年 沖縄海洋博 松下館 『沖縄海洋博覧会公式記録』
1985年 つくば科学万博 歴史館 『Image and Spectacles Victor Creates』
ビクター音響株式会社
, 1985年
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プロジェクトの概要と全体像

九州大学芸術工学研究院(石井達郎研究室)とわきすた(脇山真治代表)は、国内初の展示映像アーカイブの設立を目指します。本プロジェクトは、関連資料の所在調査、収集と保存、二次加工と公開等を中心に展開します。アーカイブは関連資料の保存の拠点であり、後世の制作者や研究者の参考に資するものです。本活動の多くは民間企業との協働により可能となるものです。展示映像が広く社会に認知され、記録と保存への理解がすすむことを期待しています。

展示映像に関わりを持つ多くの企業、関連団体とともに「展示映像総合アーカイブセンター(仮称)」の設立をめざしています。

映画は初期のものから、多くの作品が保存されています。国際的な映画祭の開催は、映画自体がひろく普及して社会的な関心・評価が高いことを示しています。そうしてフィルムからデジタルに移行した今日も、映画は可能な限り保存され続けていて、私たちの文化・芸術遺産として確実に残されています。残念ながら展示映像はほとんど保存されることがありません。その時代の先端的な技術をつかい、最高のスタッフがかかわり、相応の予算を投入したにも関わらず、今もってアーカイブする動きはありません。「イベント映像」の側面からはそもそも短命であることが伺えますし、映画と異なっていわゆる「国際標準」がなくシステムが複雑であることもその一因でしょう。

※上図は草案です。すべての関係者と合意したものではありません。
お問い合わせ

九州大学名誉教授・博士(芸術工学)

脇山真治

WAKIYAMA Shinji

マルチ映像研究スタジオ わきすた
〒810-0041 福岡市中央区大名1-14-28
第一松村ビル(紺屋2023)403号